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Vol.8 夏休み 〜山里にて〜
 

夏休み 〜山里にて〜


世の皆さんが一斉にお盆休みをとる時期より少し早く、
私たち家族が毎年決まって訪れる場所。それは信州にある
祖母の家。子どもの頃から変わらない「田舎のおばあちゃ
んち」結婚後も、この時期に実家ではなく祖母の家へ帰る
理由は、もちろん、涼しいから!!

山に分け入るような急坂を上り詰めると見えてくる
昔ながらの平屋の家は、山沿いの集落の一番奥、つまり
村の 一番高いところにあります。子どもの頃にはてっき
り「おばあちゃんちは山のてっぺんにある」と思い込んで
いて、なぜかそれがちょっぴり誇らしくもあったのでした。
山の頂上ではないにしろ、標高はおよそ700メートル。
平地と比べれば、吹く風はやはり、ひんやり爽やか。
真夏でも朝晩は長袖が欲しくなることがあるほど涼しいので、
暑い時期には、どうしても行きたくなってしまうのです。

涼しいのはいいけれど、場所柄、困ることも多々。見たこと
もないような大きな虫や蜂もたくさん寄ってくるし、近くに
コンビニも銀行もなく、バスも日に数本しか通りません。

車で自由に移動ができる今の時代には大した問題ではない
ように 思えるけれど、高齢の祖母にとっては買い物や病院
通いも一苦労 。最近では週に何度か、八百屋さんやお豆腐屋
さんが車で庭先まで来てくれるようになって助かっているとか。
それでも不便さは都市部での生活に慣れた私たちの想像を
はるかに越えています。夏には涼をもたらす山の木々も、
冬は日陰を作る恨めしい存在。

日の低い冬は、午後1時頃には早々と日が陰ってしまい、毎年
9月から5月まで、祖母はコタツをしまうことができないのです。
夏は快適だけれどあっという間。豊かな自然と静けさに囲まれ
た田舎の暮しは、不便さともまた表裏一体なのですよね。

それでも高い場所だけあって見晴しはさすが!
千曲川とその先の緑の台地、遥か遠くの山々が見渡せます。
山深い田舎の家では、何といってもこの景色が一番のご馳走。
帰ったらまず、この眺めを楽しみながらお茶を飲んで一息。
周りを見れば、覆いかぶさってくるような濃い緑の木々、
都心よりずっと青くみえる空に、沸き立つような白い入道雲。
のんびり漂うように飛ぶ鳶、竹竿の先で羽を休める蜻蛉、
夕暮れ時のヒグラシの声・・・。子どもの頃から知っている
はずの景色や音色が、今になってやけに新鮮に感じられるのは
日頃の生活が慌ただしいことの表れなのでしょうか。

しばらく過ごすと、普段なら気になって仕方ない小さな虫も
当たり前の存在として受け止められるようになるから不思議。
土や草に触れ、お茶を飲み、湯に浸かり、食事を楽しむ…
そんなスローライフを送るうちに、慌ただしさに慣れた体と
心が和らぎ、良い意味でリセットされるのかもしれません。

夏に行きたくなる理由がもう一つ。それは食卓に並ぶ
とれたての夏野菜たち!瑞々しいキュウリやトマト、
ピーマン、ナス、カボチャ、そしてたっぷりのジャガイモ。
どれも目の前の畑で採れたものばかり。野菜大好きの私には
この新鮮な野菜たちが何よりも嬉しいご馳走!

汗をかきながらの収穫作業もまた楽しみの一つです。せっせ
とジャガイモを掘って運ぶのは父と主人。実は彼等の目的は、
労働後の美味しいビールでもあるのですが・・・。

今年は初めて一緒に来た1歳4ヶ月の娘をトマト担当に任命。
慣れない畑の土に足を取られながらも、にぎったトマトを
離すまいと一生懸命。 トマトのこと分かっているのかしら?
と思ったら、 採ったトマトを指して食べたいというサイン。
まだかじることができないので、 薄皮をむいてスプーンで
すくってあげると、あっという間に2個をペロリ完食!
その食欲にはこちらが唖然。畑で完熟した野菜の美味しさは
1歳児にもちゃんと伝わっていたのですね。

日が暮れ始めたら、お待ちかねの夕食は庭のテーブルで。 昭和の初め頃から使われていた年代モノのテーブルの上に、 トマトサラダや蒸しナス、キュウリの味噌和えなど、新鮮野菜の 味を楽しむシンプルな料理が次々並び、みんなで乾杯!
近くに住む叔父や叔母も加わっての食卓は大家族の賑やかさ。 まだ料理の一部しか食べられない小さな娘も、専用席に座って 皆の注目を集め始終ゴキゲンです。こんなひとときが彼女には きっと大きな刺激になったに違いありません。

おチビさんが眠った後は、庭のランプの灯りの下で、 大人達がワイングラスなど傾けながら、ひとしきりの団らん。 いつも女性陣に囲まれている父にとっては、義理の息子とのんびり 飲みながら語りあえるこの時間が、楽しみでもあるようです。

のんびりと、でもあっという間に過ぎてしまう数日間。 子どもの頃に比べたら、ずっと短い夏休み。 でも楽しみ方を知った今の方が、充実した時間に感じられます。 こんな風に過ごせる場所があるって、幸せなことですよね。 ひ孫の成長を楽しみに待っているおばあちゃん孝行もかねて、 また来年も「田舎のおばあちゃんち」へ行く予定です。 おチビちゃん、来年は一人でトマトを食べられるかな?



夏らしい真っ白な入道雲。こんな雲の見えた日は昼暑く、夕方からは雷雨!久しぶりの停電まで体験してしまいました。娘はピカピカゴロゴロに大喜び。

涼しげな色と姿が美しい桔梗。秋の七草の一つですが、お盆の頃には咲き始めます。夏休みにいつも出会う、お馴染みの花。

ふすまや障子で仕切られている昔ながらの家はそもそも涼しい作り。(その分冬は寒い!)開け放てば風が通って涼しさ満点。暑い時は畳の上でお昼寝タイム。

畑のトマトは、採ってもまた翌日には赤くなっていて食べきれないほど。たどたどしい足取りのトマト担当は一つずつしか運べないので大忙し!?

とれたての瑞々しい野菜たち。曲がったキュウリもご愛嬌。そのまま味噌をつけてカリッ!とれたての美味しさは格別です。何本でも食べられそう。

こちらでは、身近な日常を綴ったエッセイを毎月お届けしています。何気ない事から雑貨やインテリアの話など「うんうん、あるある」で気軽に読んで下さいね。

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エッセイ&フォト AyaYamaura
ショップスタッフを経てシェリートライフルのホームページ製作担当に。現在は子育てに奮闘しつつ、在宅でメールマガジン、サイト製作の一部を担当


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